関西から、20代の男性が相談に来られたのですが、あまりに症状がひどいのと、どうしても短期間に治さなければいけない事情がありましたので、福岡に滞在してほぼ毎日催眠療法に通われるということになりました。
いままでの、入院歴がある病院からもらっていた薬を、福岡の地元の病院で処方してもらうことになったのですが、その時の精神科の医師との面談でトラブルが起きました。
彼が、3回目に訪れた時に応対した若い医師が、催眠療法をまやかしとなじって、彼を混乱させたのです。医師という立場の発言は、彼の症状を治す為に構築しかけた私と彼との信頼関係さえも壊しかねない精神的混乱を生じさせてしまいました。この日に彼は、私のところへの予約を突如キャンセルしました。心配した彼の母親から簡単な報告がありましたので、メールで状況を報告して欲しいと依頼していました。その後、4日後に彼の母親から届いたメールを紹介します。

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このメールに書かれているように、「催眠術はまやかし物だ」とか「親に負担をかけるな」とか、心の病で苦しんでいる患者に対して医師としてあるまじき発言には驚かされました。彼は今まで長い間、別の病院で与えられた大量の薬を飲み続けていたのに、徐々に減らす指導をするのでもなく、単に「薬では治らない」と言って一種類の薬しか与えないような状態でした。彼の精神的混乱ぶりが理解でき、同情とともに心から心配しました。
私は、彼の母親に、このまま薬を断った状態で放っておいては、病状が悪化するので、もう一度病院に行って薬のことを相談するように伝えました。母親が私の助言に従い病院に相談に行かれた時は、別の医師が応対されました。その時の報告の3番目のメールが届く前の午前中に、彼自身からメールが届きました。

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運良く、母親と面談された医師は、催眠療法の有効性を十分ご存じだったようです。また、トラウマの解消に、“語る”というテクニックや、”辛く痛みを伴う”という心理的なカタルシスの過程をご存じだったのでしょう。この医師の言葉で印象に残った言葉は、「いつか乗り越えなければいけない課題」と表現されたことでした。
催眠療法で、トラウマを客観的に認識し直すことを、たまに拒む人がいます。それは、過去の苦痛を再現することが辛いことと思い込んでいる恐怖からでしょう。昔からの一般的な催眠療法では、そういった苦痛を敢えて伴わせて、行動療法として行っていたのも事実です。
なぜ、退行催眠で、過去のトラウマに触れていくことが重要なのでしょうか?私は催眠療法において、過去の辛かった経験(トラウマ)の「脱学習」をするために必要なことを行うべきだと思っています。その中で私は、恐れて逃げ出すように、苦痛を伴うような追体験をさせたりは決してしません。しかしながら、トラウマ経験は、強ければ強いほど、逃げてても自然解消はしないのです。まさに、「いつか乗り越えなければいけない課題」なのです。

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この例のように、私の所に催眠療法を受けに行こうかと迷っている時に、主治医に相談して、催眠療法を否定されるケースがあります。せっかく治って人生を取り戻せるチャンスがあるのに医師の無知につぶされてしまう・・・・。何年も病院に通っていても治らなくって苦しんでいるので、別の手段を模索しているのに否定される・・・・。
「私がおこなっている催眠療法に関し深い知識があるわけではなく、一般論で否定してくるなら、あなたが責任もって患者さんを治して見せなさい!」と言いたくなる時もありました。医師に否定されたら、不安になるのは当然でしょう。勿論、勧めてくれる専門医師も多くおられます。私はこれまで、そうした医師ご自身の相談を受けたり、そのご家族の方々も治してきました。人に対し何かの発言や助言を行う場合の責任というものの欠如は怖いものです。
人生というものは、人の意見に安易に振り回されることなく、意見は知識であり判断の材料に留め、やはり最終的には、自己責任での選択・決断が重要だと言えるのです。それが、自分自身を救うことになります。